さとこ虫ブログ

イラスト制作を中心に活動する、さとこ虫ワールドを綴っていきます。

2023年カード解説「ユーモラス」

2023年版の紋章カードの解説です。

今回は趣向を変えて、物語をつづっていきます。

どこかの誰かの、カードが伝えてくれる物語です。

 

「ユーモラス」



「ほんまに、お父ちゃんはめちゃくちゃやったわ。
なんや、変わり者やったわ
一度頭に火いついたら、あかんでえ、あれはあかん。」

・・亡くなった父の葬儀の後で、母はそう話しだした。
50年連れ添った伴侶、一人になって寂しい話をするだろうと、お茶を差し出すと、なんと長年の恨みつらみを口にするなんて。

確かに父は変わり者だった。でもその父の奇行にまんざら不快を示さず付き合っていたから、いなくなって寂しがるものと思っていた。でも本当は、ワンマンぶりの父にずっと我慢していたのかもしれない。

「昔は物が飛んでくんねん。ほんま、なんであんなやろう」
延々と恨み節は続いた。抵抗もできない。
彼女は一本気なところがある。兄に言わせればお嬢さん育ちの世間知らずだそうだ。

私はなんだか、おかしくなった。
一点に向かっている人間って、なんだか笑える。
一生懸命になればなるほど、なぜか笑える。
母の一向にやまない怒りの矛先を、誰も傷つけることなく距離を置くとすれば、こんな「ユーモラス」な見方に変換するしかないかなと思う。


追記
生きてたら、怒りや強い思いなど、なかなか手ごわいものに近づくことは、しばしばです。ユーモラスな見方を味方につけていくと、受け入れながらも距離をとれる感じがします。それは、自分との感情の向き合い方にも言えるのではないでしょうか?